経営法務
理不尽な残業代請求をされない方法は?
・始業(9時)の1時間前に出社し、コーヒーを飲みつつ新聞を読み、時折資料整理。
・昼休憩(12~13時)に自席で弁当を食べ、1~2回電話対応。
・終業(18時)後、同僚と帰るため会社に滞在。
Aさんは、タイムカードの時間を根拠に、会社にいた時間全ての残業代を請求しています。この請求は認められるか、また今後同様の請求を防ぐにはどうすべきか教えてください。
1.始業前の出勤(早出)について
残業代は「働いた時間」に支払われます。タイムカードは客観的で強力な証拠となりますから、Aさんが「資料整理をしていた」と主張し、会社が「仕事していない」と証明できない場合、タイムカードの記載により残業代が認められる可能性があります。
対策としては、タイムカードを毎月確認し、従業員の早出がないかチェックします。早出があった場合は、その従業員に理由を確認し、業務が不要なら定時出勤を指導します。
就業規則に「始業前の業務は原則禁止」と明記し、改善がない場合、業務命令を出します。それでも改善が無ければ、懲戒は最終手段として考えられるでしょう。
2.昼休憩中について
次に、昼休憩時間ですが、12時~13時が休憩と決められていても、「仕事から完全に離れる時間」でないと労働時間となります。よって、電話対応を会社が指示または黙認した場合、その分の残業代が認められる可能性が高いです。
対策としては、休憩中は席を離れられることを従業員に周知します。電話対応者を決め、休憩中の負担を排除します(例:交代制)。それが難しければ、昼休みの電話を転送や留守電に設定してしまいます。
3 終業後の滞在について
最後に、終業後の滞在についてですが、終業後に業務がなければ残業代は不要ですが、Aさんが「仕事した」と主張し、会社側で業務がなかったと証明できない場合、残業代が認められる可能性があります。
対策ですが、業務がない従業員には速やかな退社を指導して下さい。また、残業は上司の許可と記録を必須にすることです(厳格に運用されていないと、許可制も否定されることがあります。)。
なお、業務が無かったことは、PCログオフ時間などで証明するしかないと思われます。
4 残業代請求を防ぐポイント
以上、残業代請求を防ぐポイントですが、まずは、タイムカードを定期確認し、始業・終業外の打刻を管理して下さい。また、就業規則で労働時間や残業ルールを明確化します。たとえば、残業や早出は上司の許可制にしましょう。休憩中については、上記のように仕事が入らない体制を整備します。
最後に、タイムカードは残業代請求の強力な証拠です。ルールが曖昧だと支払い義務が生じる恐れがあるため、管理を徹底しましょう。
月刊東海財界2025年7月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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