経営法務
著しい能力不足を理由として退職勧奨・解雇する方法は?
要領よく仕事を終わらせるBさんよりも、Aさんの方が、残業代の分給料が高くなっている状況です。
Aさんには申し訳ないですが、能力が著しく不足しているため、退職してほしいと考えています。
どのような対応が望ましいでしょうか。
1.退職勧奨等のための準備ができていない
Aさんをこのまま放置していては、他の従業員が不公平に感じてしまいますから、まずはAさんを指導して改善を求めるべきです。
粘り強く指導しても全く改善しない場合は、退職を視野に入れざるを得ないでしょう。
しかし、能力不足を理由として従業員を退職させるのは、一般的には難しいことです。
それは、①企業自身が求めている能力が何か、明確化されていないことが多い、②能力不足を客観的に把握するための資料がなく、立証できない、などが理由です。
2.上記①②を同時に解決する方法
そこで、まずは貴社において当該従業員に求める能力とは何かを明確にしましょう。
例えば、Aさんに渡す注意書に、求める能力として「会社がAさんに求める能力としては、●●の業務を他の従業員と同様に1日●回というスピードで処理する。」等を書きます。
そして、「令和7年6月15日現在、1日●回しかできておらず、当社が求める水準に達していない。」、と現状の業務遂行内容も書きます(注意書作成の都度、時系列で追記していくとより良いでしょう。)。
このような注意書をAさんに渡して、改善指導します。
なお、いつどのような指導をしたかも注意書のどこかに記載しておくと良いでしょう。
そして、数か月をかけて、何度も改善指導し、その都度注意書を渡します。
これによって、①企業自身が求めている能力を明確にAさんに伝え、②改善指導をしたが、能力不足に改善が見られない、との客観的証拠が準備できます。
3 退職勧奨・解雇
前項のような丁寧な指導と注意書交付によって、Aさんも自覚し、会社からの退職勧奨に応じやすくなると思われます。
なお、退職勧奨は、強引に進めないようにして下さい。
Aさんが退職勧奨を明確に拒絶しているのに勧奨し続けたり、長時間に亘って頻繁に退職勧奨を行ったり、Aさんの人格を否定するような表現で勧奨したり等すると、退職勧奨が違法となり、退職が無効となったり、損害賠償が請求されるおそれがあります。
また、解雇も考えられるところですが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効となります(労働契約法16条)。その意味でハードルが高いので、なるべく退職勧奨で同意をもらうように努め、止むを得ず解雇する場合も、顕著な能力不足なのかどうか慎重に判断して下さい。
月刊東海財界2025年8月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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