経営法務

まだそんな身元保証書ひな形を使ってるんですか?無効ですよ。

入社5年目の従業員Aが半年前に不祥事を起こし会社に大きな損害を与えたので、弊社はこの従業員を解雇した上で損害賠償を請求したいと思いました。ところが、この従業員にはお金がありません。全従業員から入社時に取り付けている身元保証書の連帯保証人Bに責任を追及できないでしょうか。

(身元保証書の内容)
「この度、Aが貴社の社員として採用されるにあたりまして、身元保証人として、本人が会社の就業規則及び諸規則を遵守して、誠実に勤務することを保証いたします。万一、本人がこれに反して、故意又は重大な過失によって貴社に損害をおかけした場合は、本人にその責任をとらせるとともに、私は連帯して、その損害を賠償する責任を負うことを確約します。身元保証人 B(Aの父)印 令和3年5月1日」

この身元保証書では、極度額の定めがなく、3年の有効期間も過ぎているため無効であり、Bに責任追及できません。

1.極度額の定め

民法改正に伴い、令和2年4月1日以降、身元保証書を取り付ける際には、極度額の定めが必須となっています。
昔の書式をそのまま使っていますと、この極度額の定めがない例が多く、身元保証書が無効となっているケースが大変多いです。

2.有効期間の定め

身元保証契約の期限は最長5年、有効期間の定めが無い場合は3年となります(身元保証ニ関スル法律第1条)。
今回見せて頂いた書式だと、有効期間の定めが無いです。残念ながら、有効期間は3年になります。書面に保証期間を5年間とする、という文言を入れておくべきでした。
また、この種の身元保証書は更新を怠っていることも多く、期限切れになっているケースも少なくありません。

3.どういう条項を入れておくか

1、2を踏まえ、どんな身元保証書の条項が必要か、文例を記載しておきます。

「第1条(身元保証)
 身元保証人は、本人が勤務先との雇用契約に違反し、又は故意若しくは過失によって勤務先に損害を生じさせたときは、極度額金300万円の範囲内で★、本人と連帯して直ちにその損害を賠償する責任を負う。」→極度額の規定です。

「第2条(契約期間)
1 本契約の存続期間は、本契約の締結日から5年間とする。★
2 勤務先及び身元保証人は、前項の期間満了後も、本人が甲に勤務している間、更新契約を締結することができる。ただし、更新後の契約期間は、更新のときから5年を超えることができない。」→契約期間の規定です。

4.更新を忘れない

身元保証書は、最長でも5年で更新が必要となります。
せっかく入社時に取り付けても再度取り直しをしないと、無効となってしまいますから、必ず5年ごとに保証人から身元保証書を取り直すようにしましょう。

5.まとめ

身元保証書は古いひな形をそのまま使っている会社が非常に多いのですが、古いままですと極度額の定めが無く無効であったり、短い期間しか有効ではなかったりと難点があります。直ちに確認して頂ければと存じます。

月刊東海財界2025年11月号掲載

※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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