労働紛争
労働組合との団体交渉その1
最近,当事務所での相談では,労働組合が労使間紛争に関与し,団体交渉を申し入れてこられた事案が増えてきています。
そこで,労働組合との団体交渉にあたって,経営者側が知っておくとよいことを数回に分けてお伝えしたいと思います。
【知っておくとよいこと】
1 団体交渉ってそもそも何ですか?
団体交渉とは,労働者が労働者の代表を通じて使用者と労働条件等の待遇や労使ルールに関する労働協約やその他の取決めを目指して行う交渉のことをいいます。
たとえば,給料をアップしてほしいなどという要望を組合の代表が使用者にぶつけ,使用者と議論するような交渉があります。
2 使用者は団体交渉に応じなければならないですか?
基本的には使用者は団体交渉に応じなければなりません(労働組合法7条2号)。
使用者は,団体交渉の申入れがあった場合,労働者の代表者と誠実に交渉にあたる義務があります。
交渉というからには,単に労働者側の言い分を聞くだけではなく,それに回答をしたり,回答の論拠を示す必要があります。
3 団体交渉に応じない場合,どのようなペナルティがありますか?
上記の通り基本的には使用者は団体交渉に応じなければなりません(労働組合法7条2号)が,それに違反した場合,どうなるでしょうか。
まず,団体交渉を拒否された労働者側は,労働委員会に救済命令を申し立てることができます。
団体交渉拒否が不当であると判断され救済命令が出されてもなお,使用者側が団体交渉を拒否する場合,使用者には過料という制裁が課される可能性があります(50万円以下 労働組合法32条)。
なお,救済命令を使用者側が争って裁判をし,その裁判が確定した後にさらに団交拒否を行うと,1年以下の禁固,100万円以下の罰金になる場合もあります(労働組合法28条)。
また,不当な団体交渉拒否に対しては,損害賠償請求がされる場合もあります。
したがって,団体交渉を拒否することは得策とは言えません。
4 組合が言ってきたことに全て応じなければなりませんか?
団体交渉に応じる義務があると言っても,それはあくまで交渉自体に応じなければならないに過ぎません。内容について応諾できないことがあればそれはきっぱりと断れば結構です。
労働組合の迫力に押されできない約束をしてしまうと,後日,撤回したいと思っても覆せなくなります。
合意することが強制されているわけではないことをよく理解して下さい。
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。